Column
2023.03.20
カートリッジの直近で振動を取る意義
プレイヤーの固有音ってどうやって決まるのでしょうか。
プレイヤーに伝わる振動には設置台から伝わる振動、スピーカーからの空気振動などが考えられますが、意外と忘れられがちなのが、プレイヤー自身が発する振動とプレイヤーが持つ固有振動ではないでしょうか。
プレイヤーが発する振動
1、モーターの振動
2、軸受けの振動
3、ベルトとプラッターの摩擦振動
4、トーンアームの動作振動
5、アイドラの振動
等の駆動系振動でしょうか。
そしてここからが厄介なのが「プレイヤーの固有振動」です。
物にはそれぞれ個別の振動があります。
すなわち「固有振動」です。
レコードプレイヤーにおいては「固有振動」が、カートリッジの針へ影響を与え、プレイヤーごとの音に個性を与えています。
プレイヤーの固有振動はプレイヤーを構成する部品の「素材・形状・質量・組み合わせ」で決まってきます。
では、「素材」による音の違いって何でしょう。
アルミとか鉄とか、ハンマーで叩くと違う音がするのは、あなたの創造される通りです。
これが素材による「固有振動」の違い、すなわち音の違いです。
次に「形状・質量」による音の違いはとは何でしょう。
同じ鉄でも、薄板と厚板を叩くと違う音がします、薄板はビンビンと響くでしょう厚板はコツコツと鈍い音となるでしょう。それが重くなればなるほど鈍い音となります。
昔、レコードプレイヤーに「マイクロ」というメーカーで巨大な砲金ターンテーブルを使った、名機がありました。
憧れでした。
当時の私は砲金の巨大なターンテーブルの意味が解りませんでしたが振動の勉強をしてやっと分かったしだいです。
すなわちマイクロのターンテーブルは大きな質量で「振動周波数を下げる」ことにより、再生に悪影響を与える高周波帯の振動をおさえることができるのです。
あの巨大な砲金ターンテーブルは不要振動の抑制に意味があったのです。
また、ヤマハの名機「GT2000」は、アルミ製のターンテーブルをダイカスト製でなく、鍛造工法で製作されています。
鍛造とは、熱したアルミを叩いて鍛える工法です。
日本刀の様に熱い鉄を叩いて鍛える、と同じです。
同じ大きさのターンテーブルでも鍛造品とダイカスト品では見た目は同じでも素材としての中身が別物なのです。
同じ大きさでも鍛造製のターンテーブルは高密度で重い素材になります。
それにより、鍛造製ターンテーブルは振動周波数が下がり再生音への悪影響を抑制しています。
オーディオ全盛期の頃ですから贅沢な工法が取れたのですね。
古き名機たちも「カートリッジ直近での振動対策」を、しっかりされていたのです。
さて、現代の製品で日本が世界に誇るレコードプレイヤーと言えば、テクニクスの「SL-1000R」ではないでしょうか。
ターンテーブルは重量級です、素材は真鍮とアルミを重ね合わせ、互いの固有振動を打ち消し合わせています、更に高減衰ラバーを組み合わせることで、ターンテーブルの固有振動を抑制しています。
さらに注目すべきはトーンアームのパイプの素材をマグネシウムとしてトーンアームの不要振動を抑制しています。
とかくDDの事が注目されやすいテクニクスのプレイヤーですが、ターンテーブルや、トーンアームにまで制振対策していること。
カートリッジ直近での振動対策に優れていることが再生音に大きく影響を与えているように思えます。
流石としか言いようがありません。
(ちなみにテクニクスの入門機である「SL-1500C」にセレニティの3点セットを装着してカートリッジ直近の不要振動を除去してやると「SL-1000R」に肉迫します。
「SL-1500C」はセレニティを開発する際のモニタープレイヤーの一つです、実際に弊社の視聴室で試聴されたお客様は入門機であるはずの「SL-1500C+セレニティ」の音に驚かれています。)
レコードプレイヤーのメーカーは世界中に沢山ありますが、そのほとんどが足元からの振動対策にとどまり、テクニクスの様に本格的にカートリッジ直近での振動対策をしているメーカーは少数派ではないでしょうか。
賢明な貴方なら、すでにお判りでしょう、足元からの振動対策だけでは不十分。
足元から伝わる振動やプレイヤー自身が発する振動が、回転スピンドルやターンテーブルそしてトーンアーム等が持つ振動が重なり、カートリッジの再生に悪影響を与えています。だからこそカートリッジの直近で不要な振動を取り除かなければ、振動対策とは言えないのです。
再生音の個性が生まれるのは、決して悪い事とは思いません。
しかし不要振動により情報量が欠落する事は別問題です。
音の輪郭 音数 静寂 立体感 などなど、 情報量の違いは一聴されて多くの方が気付かれることでしょう。
音の入り口で欠落した情報は二度と復活できません。
不要振動の害悪は「情報の欠落」です。
貴方は、貴方の愛聴盤の持つ音楽情報を聴き逃しているとしたら穏やかでいられますか?
昨今のプレイヤーは、一部のハイエンドを除き、売れ筋価格帯の製品に、そこまでコストを掛けられないのはメーカーとしても、じくじたる思いがあるのではないでしょうか。
そこは、セレニティで確実にカバー出来ると考えますし、そのように開発いたしました。